みなさんはデザイン事務所や広告代理店にデザインを依頼された際、3案提案される事が多いのではないでしょうか?
弊所でも3案提出する事はよくありますし、パートナーシップを結んでいる広告代理店からも3案提出の要望をいただきます。アシスタント時代にも3案出すように教わりました。

場合によっては5案ほど提出する事もありますが、
基本は3案です。

この「3案」の提案内容には下記のようなパターンで提案している事が多いようです。

 

 

正直、提案というよりも場しのぎの為の案という印象をうけますね。
もちろんデザイナーによって提案の仕方やアイディアの順番、考え方はそれぞれ違いますし、
駆け引きなしで純粋にいいと思った3案を提出するように徹底していらっしゃる方もいます。

しかし上記のように提出するデザイナーが多いため、
「決まりきったものしかでてこない」というクライアントからの不満の声を
業界内のあちらこちらで聞きます。

本日はなぜ、このような形の提案になるのか、説明と対応方法論を掲載します。

 

なぜ3案なのか

そもそもなぜ多くの制作チームは3案提出するのでしょうか。
それは提案をうけたクライアントが提案内容を比較し、選択しやすいという心理が働くからです。
その事を制作チームは知っているため、プロジェクトを円滑に終わらせるために3案提出します。

では2案だけのご提案の場合はどうなるでしょうか。
少し想像してみてください。

「どちらか選んでください」と言われているみたいで、検討しにくいですよね。
A案とB案を合わせたらどうなるのか見てみたいという、リクエストはよく聞きます。

逆に5案や6案だと選択肢が増えすぎて悩んでしまいます。
ましてやデザイナー側も短期間で数多くのおすすめ案を作るのは困難ですから、
この場合提案というより、とりあえずみてもらって反応を見ようという場合が多いですね。

そのため、3案提出するデザイナーが多いのです。

 

 

この3案提出の理屈は理解できるが、提案内容の質はどうなのか。

3案提案する理由は容易にご理解いただけたかと思います。
しかし、この3案の提案内容、そもそもどうなんでしょうか。
なんか場しのぎというか、提案とよべるのか?といった印象をうけるとおもいます。

 

【A案】ベタ案
これは案件にもよりますが、提案する価値すらない場合があります。
例えばコンサルティング会社のパンフレットの表紙が、握手の写真というのは決して良いとはいえません。
なぜなら他の会社と、まる被りだからです。

数年前、ビッグサイトで開催された中小企業展に足を運んだところ、出展していた企業が置いていたおびただしい数のパンフレットの表紙に、似たような握手の写真の表紙がいくつも並んでいたのを覚えています。

これではパンフレットをわざわざ並べても、手にとってもらう事はないでしょう。
記憶にも残らなければイメージ向上にもつながりません。
「ただ作っただけ」「ないよりマシ」といったレベルですね。

【C案】奇抜なアイディア or A案とB案のいいとこ取り案
こちらはどうでしょうか。
「いいとこ取り案」は比較材料としてお見せするのはいいとしても、奇抜なアイディアは必要でしょうか?奇抜な案が必要な案件であればいいとしても、そうじゃないものに、あえて奇抜なもの(奇をてらったもの)を提案するというのもクライアントの事を考えた提案とは言い難いです。

 

これらの3案提出においてのデメリットもデザイナーは知っています。
ですが、それでもそのベタ案や奇抜な案をわざと提出しています。

 

なぜ、良くないと分かっている案を提案するのか。

いくら円滑にプロジェクトを終わらせるためとはいえ、もう少し、実のある提案にならない理由はなぜなのか。
それは案数に頼らないといけない程、ヒアリングができていない、もしくは意識共有できていない事が多いからです。
そもそもクライアントに提案すべき良いデザイン、もしくはクライアントにとって悪いデザインが何か、理解・共有ができていないまま、デザインを提案しているケースは、数多く存在しています。
デザイン事務所が広告代理店の下請けの場合、ヒアリングを行いたくても出来ない場合がほとんどです。
よく分からないままデザインを作っている事のほうが多いといっても過言ではないかもしれません。

つまり平たく言えば、3案だしてクライアントの反応をみているのです。
悪い言い方をすれば、無難に何か一つひっかかって、選んでくれさえすれば、仕事は丸くおさまる。そう考えて提案している可能性は大いにあります。

ではもし、クライアントがその良くない案を選んでしまった場合、制作チームはどうするのでしょうか。
もちろんそのままプロジェクトを進めます。
これはプロの行動としても、提案されたクライアントとしても何も利点がありません。
win-winどころかlose-loseです。

よく耳にするデザイナーの嫌な話として「あのクライアントはセンスがない」と愚痴を聞きます。
ですが、クライアントは素人です。分からないから、決してセンスがいいとも言えないベタな無難な案を選ぶ事は、当然の心理かもしれません。
まずどうすべきかを共有した上で、いいと思う案を提案する必要があります。

 

よりよい提案を受ける為の対処法とは?

これらの状況を誘発する原因はデザイン案を提出するまでのプロセスにあります。
この提案するまでの期間が一番重要なフェーズなのですが、不思議なことにこのフェーズに避けられる時間が
極端に短い事はよくあります。
もっと共有しておくべきデザインの方向性についての話合いを十分に持つべきで、それをできるようなスケジュールを確保しておく事が重要です。

デザインはアートではなく、販促が目的ですから、まずクライアントの事を知る必要があります。
そのためコミュニケーションをとり、提案する為の土台をつくることが重要になります。

また逆のパターンとして、クライアント側が十分な期間をもって依頼したとしても、制作チームからのヒアリングがきちっとなされていなかったり、
提案内容が薄く一方的だったり、提出期日間際になってバタバタと連絡くるようであれば、
その依頼した案件は、しっかりと取り組まれていなかった可能性が高いと思われます。

本来、制作チームがリードして打ち合わせの場を設けるのが筋ですが、もし制作チームからヒアリングや事前確認事項が少なければ、クライアント側から場を設けられたほうが安心です。どういうデザインの方向性にするか共有してからデザインを提案して欲しいとお願いするといいかと思います。
広告代理店に依頼しているのであれば、デザイナーも同席して欲しいと要望をだされる事をお勧めします。
スケジュールに余裕があれば1度だけでなく2度3度最低でも場を設けた方がいいでしょう。
そこでトーン&マナーやムードボードの共有、目的、競合、などなど、いくつかの行程をもたれた方がベストです。

 

 

そして、選びやすいという心理的理由で案の数を決めるのでなく、どういう事を目的にして何を達成したいのか、それらを共有した上で、
「必要な」案を提案してもらうように、しっかりと意識共有をする事が、最善だと思われます。
「案の数」が前提ではなく「案の質と種類」を前提に進めるべきです。
弊所でも3案の提案をマスト条件とはしておらず、 提案数は1案かもしれないし5案かもしれない。
そのようにしております。ヒアリングの結果でどんな案をどれくらい提出するかを決めるようにしています。無鉄砲な数合わせの為に労力をかけて制作してお見せするよりも、
質のいい必要なアイディアを提案するために、ヒアリングなどに労力をかけた方が、
結果、いいものに仕上がります。

 

各業種の注意点

広告代理店に依頼している場合
広告代理店は注意が必要です。
デザイン事務所と違い、相手がプロでない場合があります。デザインや広告に対して詳しく知らない場合があります。もちろん、きちっとしたプロも多くいますが、ただの素人営業マンも多くいます。
人当たりはいいですが、デザインに必要な情報や目的意識がなく、デザイン事務所に依頼するのも締め切り日ギリギリという人をよくみます。
担当者がちゃんとしたプロかどうか、また制作期間がしっかりとられているか、 確認をとられたほうがいいと思います。
更に依頼された案件を別の広告代理店に発注していたりして、制作するデザイナーは孫請け、ひ孫請けになっている場合も多くあります。これではもはやクライアントの意向を聞く余地などありません。さらに制作費もドンドン中抜きされており、デザイナーもじっくり制作に時間をかけれない状況になっている場合があります。
どういう体制で行なっているか、把握することをお勧めします。

 

デザイン事務所に依頼している場合
デザイナーは理論的なタイプと、職人的なタイプがいます。
理論的であれば、企画意図やプロセスはしっかりしたものになりますが、職人的デザイナーに比べ制作技術が劣る事があります。
逆に職人的な人はデザインの腕はいいですが、企画が弱いものになる事があります。
要望により向き不向きがありますが、デザイン事務所を検討されている方はデザインの完成物だけでなく、
どういうプロセスで行っているのかも依頼される前に確認する事をお勧めします。

 

制作チームではなくクライントに要因がある場合もあります。
もし、あなたがクライアントであって、デザイン提案までのスケジュールに余裕を与えていなければ
少し見直して、提案までの流れを再考する価値はあります。
一方的にいつまでに提出するようにいうのではなく、締め切りまでのスケジュールを制作チームに組んでもらい、精度がある提案をしてほしいと伝えてみてはいかがでしょうか。
ちゃんとしたデザイナーや代理店の方であれば応えてくれると思います。むしろ、そういうお客さんを望んでいます。
その後の作業はきっとスムーズにいくはずです。