みなさんは、デザイン事務所に企業ロゴを制作した場合、いくらぐらい掛かると思いますか?

ロゴの料金は相場がないといわれ、デザイナーによって大きな開きがあります。
相場がないといっても、25万〜60万くらいと見ておけば、問題ないでしょう。
もちろん、目的や使用用途によってはもっと安価になるかもしれませんし、高額になるかもしれません。

一方、昨今ではクラウドソーシングなどで、2万〜5万円で会社のロゴをつくられる方が増えていますが、
デザイナーの多くは、クラウドソーシングで制作する事をオススメしていないようです。当方も賛同しておりません。

しかし、デザインが10万円以上安くなるのなら依頼する側としては嬉しいかぎりですよね。しかも50案以上の提案があり、選び放題です。

クライアントにとって嬉しいサービスなのに、なぜクラウドソーシングでのロゴ制作を賛同していないデザイナーが多いのでしょうか。
本日はデザイン事務所に依頼するロゴ制作が、クラウドソーシングと何が違い高額になっているのか、その背景を記載したいと思います。
※企業ロゴが前提になります。

 

ロゴの基本的な用途と重要性

企業ロゴやブランドロゴは少なくとも数年から10年以上は使うでしょう。
その間様々な場所でロゴを使用することになります。
看板、パンフレット、名刺、ウェブサイト、社用車のステッカー。他には商品に刻印する場合もあります。
用途に合わせて表情を変える販促物や商品に反して、ロゴだけはどんな場面でも全く同じ表情です。
そのため、コミュニケーションデザインの要となります。

もしロゴを変える場合、これら制作した販促物全ても変えなくてはなりませんので、膨大なお金がかかります。
だからロゴは安く抑えたいと考える経営者も多いと思いますが、一方で、変えなくて済むように慎重に作る必要があります。

もちろん変える事は悪い事ではありません。会社は生き物ですから、慎重に作っても変える必要がでてくるかもしれません。
ですが、その変える理由がポジティブなものである必要がありますよね。

では、慎重につくるとはどういう事なのでしょうか。クラウドソーシングでは何十個ものロゴから時間かけて選んでいるのに、慎重とはいえないのでしょうか。

デザイン事務所とクラウドソーシングには、大きく3つ、目に見えづらい相違点があります。
この相違点がロゴの精度を大きく変えています。

①考えている事
②ロゴとしての精度の事
③実際に使用する上での配慮の事

一つずつ説明していきたいと思います。

 

①考えている事

優秀なデザイナーは企業ロゴを作る場合、間違いなく企業全体のことを考えてロゴを制作します。
企業がどこを目指していて、どういう企業として見られたいのか。その為にはどういう顔で消費者とコミュニケーションをとるべきか、という事を考えています。
よく耳にする、いわゆるブランディングというジャンルの最低限の考えかたです。

ブランディングとはロゴを変える事やロゴを制作する事ではありません。
どういう風に消費者とコミュニケーションをとっていけば、企業の魅力が最大限活き、差別化でき、ブランド価値としてあがっていくのか、それを考え行動に起こしていく作業です。その行動の一つがデザインになります。
企業ロゴを制作する場合、これらの事を無視する事はできません。
なぜならロゴは様々な場所に使用する事になり、様々な販促物や商品の表情に大きく関わってくるからです。
例えばパンフレットの場合、ロゴがもしオレンジ色だったら、パンフレットは間違いなくオレンジになります。
マークが☆であれば、☆が背景パターンに使われるかもしれません。
ロゴの色はほとんどの場合、コーポレートカラーとして設定されます。
そのため、好き嫌いで決めるのではなく、企業の印象としてどうなのか考えて色を決めるのが望ましいです。
簡単にいうと、暖かみあるものにしたいという理由でオレンジにする、などです。
しかし、暖かみ=オレンジで安易に片付けるのもよくありません。業界によっては、オレンジだらけの業界もあります。
携帯会社をみてみると、会社毎にキレイに色分けがされていますよね。おそらく競合会社とのイメージのバッティングを回避した結果です。
小さな店舗でも、同じ駅の同じ業種のお店と印象が被らないように、意識された方がいいでしょう。

クラウドソーシングなどの激安コンペでは、ここまで考えた提案はできないでしょう。
なにより、提案できる程の情報がありません。だって依頼者の業界のことも、依頼者の強み、将来の展望、理念など知らないんですから。たった200文字ぐらいの文章で分かるわけがありませんよね。
よくあるケースとして、クライアントがご自身たちでブランディングの事を考え、その結論として出たアイディアに対しての具体的な造形に関する要望を、デザイナーに伝えて制作する場合があります。
こういったケースの場合気をつけたいのは、素人が考えた造形をデザイナーが形にしているだけになってしまう事です。情報がなく考える余地がない場合は、デザイナーはオペレーターになってしまいがちです。
クラウドソーシングは直接話しあう事ができないため、このような事が発生しがちだと思います。
企業が行きたい方向性に適した造形はなんなのかを考える事は、デザイナーが得意とするところです。そしてたくさんのアイディアのストックを持っています。相談して提案してもらい、一緒につくるのが望ましいでしょう。
▶最適な提案をうけるには

 

②ロゴとしての精度の事

少なくとも私は企業ロゴを手がける際、何度も何度も出力して、様々なサイズを目で見て確認します。大きくした時の見え方、小さくした時はどこか印刷で潰れていないか、要素同士が近すぎないか等々。
そしてパンフレットや名刺のサンプル等も簡易で制作して、どんなロゴ展開になるか、検討します。
マークがあるのであれば、パターン展開ができるのか検討します。
一つの方向性が大体定まれば、書体のバリエーションもいくつも作成します。
ブラッシュアップをして精度を高め、検討します。

色の設定についても各設定で行います。
CMYK、RGBはもちろん、HEX、Pantone、DICなども設定します。
印刷物なのか、モニターでみるのか、ウェブでみるのか、1色印刷で制作するのか、それぞれでカラー指定をしなければなりません。そういった別々の環境でも適切な印象を消費者に与えるに、カラー指定はとても重要な要素になります。

クラウドソーシングのサイトに登録しているデザイナーには素人の方が多くいます。彼らが上記の事を考え、実行できているとは到底思えません。
またプロであっても安価でうけていることや、クライアントとちゃんとしたコミュニケーションがとれないことなどから、
上記の行程をしっかり行えている案件は少ないのではないでしょうか。
CMYKやRGBでのカラー指定は行なっているようですが、HEXやPantone、DICなどの指定をしているケースは少ないようです。

 

③実際に使用する上での配慮の事

最終的に納品する際はロゴマニュアルを作成します。これはロゴをきちっと使用していただく為に用意するものです。ここには指定書体や禁止事項、色設定の他に、アイソレーションといって、ロゴの周りにとる余白指定に関する事も記載しています。ロンドンではブランディングが非常に高度なレベルで行われているため、ブランドマニュアルといって、広告にロゴを配置する際の位置指定まで行われています。

このようなマニュアルをなぜ作るかというと、何年も使用し色々な人がロゴデータを使う事になるためです。
どんな人が使っても同じような見え方をするように、説明書をつけるのです。
そうやって、世界規模の会社であったとしても一貫性もったコミュニケーションが可能になります。

 

ぱっと見では分からないもの

簡単なイベントロゴ等ではここまでシビアな事は行いませんが、これらの事がロゴ(特に企業ロゴ)には必要になります。
企業規模によっても難易度や規模は変わってきますが、基本は一緒です。

デザインへの評価基準は非常に難しいものがあります。そのため、デザインに対する投資の仕方は人それぞれです。
クラウドソーシングで提案されるデザインと、デザイン事務所でじっくり制作するものとは似て異なるものです。
ぱっと見では違いが分かりづらいのがデザインの投資を悩んでしまう要因だと思います。

しかし、これらの違いを考慮した上で、クラウドソーシングで安く仕上げるのか、それともデザイン事務所と組んで深く制作していくのか、選ばれた方がいいでしょう。